クリスマスの"あの"星の話

こんにちは、Isochka(いさちか)です。ちょっと低浮上気味ですがちゃんと元気に生きてます。

 

この記事は天文系同人サークルEinstein's Crossさんの企画Astro Advent Calendar2022の一環として書いたものです。

2年連続で参加させていただきました、ありがとうございます。そして納期遅れ誠にすみません……(土下座)

 

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クリスマス。


何となく多くの日本人がチキンとケーキを買い、子供達や大切な人にプレゼントを贈ったりする日。
(それってクリスマスというよりその前日の話では?というツッコミは受けつけません)
街中には綺麗に飾りつけられたツリー。丸いオーナメントやイルミネーション、そしててっぺんには金色の星。


今回のテーマとなるのは、まさに今登場したこいつである。クリスマスツリーのてっぺんの星。正式名称は「ベツレヘムの星」という。
キリスト教徒の多い日本では、ツリーの上にあるのを見たことはあっても、名前や由来などは気にしたことがないという人も多いかもしれない。


ベツレヘムの星とは、イエス・キリストが誕生した直後に突如輝いたとされる星である。
東方の三博士と呼ばれる3人のすごい人たち(語彙力)がこの星を見てイエスの誕生を知り、星を頼りにイエスのもとにたどり着いて拝んだのだそう。星はイエスのいる場所の真上でちゃんと止まったというのだからすごい。

ちなみにこのベツレヘムの星、本来シンボルとして描かれる際は八芒星で表されるらしい。ツリーの上にあるやつは大体五芒星だけども……まあいいか。


さて、読者の皆様はそろそろ気になってきているだろう。

「その星って、実在する(もしくはした)存在なのか?」と。

ここまでの情報から、既にあれこれ仮説を想像している方もおられるかもしれない。


この世界的に有名な伝説の存在、古今東西多くの人が関心を持ち、ベツレヘムの星の正体について様々な説を唱えてきた。
フィクションだとかスピリチュアルな存在という説ももちろんあるが、天文学的なアプローチに基づく仮説も少なくない。


例えばヨハネス・ケプラー
めちゃめちゃ有名な天文学者である彼は、紀元前7年の木星土星の接近がベツレヘムの星の正体と考えていた。
この年、木星土星は3回も接近をくり返したという。それも2惑星が合体して見えるほどの大接近。この明るい星たちが3度も大接近・合体すれば、確かに「奇跡」と見えるかもしれない。

ただし後世の計算によれば、3度の接近は事実ではあるものの、合体して見えるほど近づいてはいなかったようだ。
とはいえコンピューターが登場する300年以上前に、紀元前の惑星の動きがかなりの精度で計算できたという事実を考えると驚かされる。頭のいい人ってすごい。


この他にも、突然現れたという記述から、彗星であったという説や、超新星説なんかも唱えられている。多くの読者の方も、まず初めにこれらの可能性を考えたのではないだろうか?

まあ実際、これらの天体の出現については歴史を通じていくつも記録が残っている。そしてそれらはしばしば、吉兆や凶兆とみなされてきた。
明るい彗星や超新星が突如空に現れたとして、正体を知らない人々が見れば、大いに驚き何らかの意味づけをしようとすることは想像に難くない。


ただし、これらもあくまで可能性にすぎず、「そうだとすればいつ現れたどのような天体なのか」は特定が困難である。

例えばハレー彗星が正体だったという説が唱えられていたりする。が、ハレー彗星の接近は紀元前12年。キリスト誕生が紀元前4年ごろらしいのでちょっと早すぎる。(えっ紀元前4年に生まれてるの?と思った方、安心してください筆者もです)

彗星は、ハレー彗星のような規則正しい周期で出現するものばかりではない。ふらっと一度だけ太陽系に立ち寄って永遠に去っていってしまうものだって多い。そういう彗星だった可能性も十分ある。

超新星爆発だって、残骸が観測できる場合はあれど、いつ爆発したかを特定することはなかなか容易ではない。藤原定家の『明月記』のような記録が残っていればいいが、そういうケースばかりではないのだ。


長々と書いてきたが、結局ベツレヘムの星が実在の概念だったのか、そうだとすれば何なのか、明確な結論は出ていない。

その頃たまたま明るかった惑星なのか、彗星や超新星といった夜空の新参者だったのか。
あるいは刹那的な火球が伝説的に語り継がれた姿なのかもしれないし、ひょっとしたらそもそも天体現象ですらない、大気圏内の何らかの発光現象だったのかもしれない。

実在すら不明確な存在ではあるが、科学的妄想(?)の好きな筆者としては、こんなふうに色々な天体とか現象を想像する方が楽しいと感じる。

皆さんには、クリスマスツリーのてっぺんに何が輝いているように見えるだろうか?

極東のアステリズム

Isochka(いさちか)です。

この記事は天文系同人サークルEinstein's Crossさんの企画Astro Advent Calendar2021の一環として書いたものです。天文ド素人が書いたものなので、あまり期待せず気楽に読んでください(予防線)。

 

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現代の天文学で「星座」と呼ばれるものは88個ある。1922年に国際天文学連合総会で採択されたものだ。正確に言うと1922年時点では星座を88個とすることとその名称が決まったにすぎず、星座の境界が決まったのは1928年。

…ん?星座の"境界"?

実は天文学において、「星座(英: constellation)」とは星々を結んだ図形のことではない。天球を分割した88の「領域」だ。この領域それぞれに名前があるおかげで、天体の(天球上の)位置を「アンドロメダ座の銀河」とか「はくちょう座ブラックホール」とか表現できるのだ。

一般にイメージされる"星座"——星々を結び、色々な形に見立てたもの——は、前述の星座と区別して「アステリズム(英: asterism)」と呼ばれる。歴史を通じて、様々な国・地域の人間が様々に星を結び、アステリズムを見出してきた。星を結んで人や動物や物の姿を連想したものも、「夏の大三角形」とか「冬の大六角形」とかもアステリズムだ。

これらのうち、西洋の88星座にまつわるものや、明るい星を結んでできる図形はよく星空図鑑でも見かけるが、東洋のアステリズムについてはなかなか知る機会が少ない。前置きが長くなってしまったが、この記事では中国と日本のアステリズムを少しだけ紹介する。

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①中国

古代中国では、北極星を天帝とみなした。アステリズムは星官と呼ばれ、天帝から遠ざかる=南に下るにつれ地位の低い星官が並ぶ。北極星付近には皇族がいたりする一方で、西洋で言ううさぎ座付近には厠の星官があるほどだ。そこまで作る?

このため、西洋のアステリズムのように「星の並びの形から直接連想されたもの」というより「配置ありきで設定されたもの」が多い印象だ。中国のアステリズムを見ても正直「この並びをあれに見立てたのか!」という感動は少ないかもしれない(主観)。

中国では、天球を三垣二十八宿の31の領域に分けていた。三垣はおおむね天の北極に近い部分とその東西の3領域で、文字通り垣(城壁)のような長いアステリズムで区切られている。二十八宿は、天球上での月の通り道を区切った28の領域(星宿)を指し、それぞれには基準となった28の星官がある。

二十八宿は4つの方角の七宿ずつに分けられ、それぞれに四神があてがわれた。東方青龍、北方玄武、西方白虎、南方朱雀の、あの四神だ。

七宿の星官それぞれについて知るならこちら、全体の並びを掴むにはこちらが分かりやすい(なお後者のサイトでは四方の並びに誤りがあるので注意。正しくは左から順に西、北、東、南)。イメージしやすい例として東方青龍を挙げよう。スピカとアークトゥルスを2本の角とし、アンタレスが赤い心臓、さそり座の尾部がそのまま龍の尾にあたる。個々の星官を見ると何だか分からないが、いくつかまとめて見てやることでイメージが掴める。さながら西洋のアルゴ船に似た構造になっているのだ。

②日本

古代から日本には中国の星官・星宿の概念は入ってきていたようで、奈良県キトラ古墳高松塚古墳の壁画にそれらが残されている。

それらとは別に、日本全国で星々の並びに様々な名前がつけられ、親しまれてきた。

例えばさそり座のS字のカーブを、瀬戸内の人々は「うおつりぼし」と呼んだ。もっとも、さそり座を釣り針に見立てるのは日本に限らず世界各地でみられるようだ。

W字形でお馴染みのカシオペヤ座は、日本各地で「やまがたぼし」「いかりぼし(錨星)」と呼ばれた。錨というのは恐らくこの絵のように、北極星も含めて見立てた呼び方であろう。壮大な錨だ。

今の時期夜空でひときわ目を引くオリオン座。あの特徴的な並びを古の日本人は「つづみぼし(鼓星)」と呼んだ。また、白いリゲルと赤いベテルギウスが向かい合うように見えるさまを旗の色に見立て、それぞれの星を「源氏星」「平家星」と呼ぶ地域もあったそうだ。人ではなく軍?陣営?を日本ならではの発想だ。

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極東の星空の旅はいかがだっただろうか。たまには馴染みのオリオンやサソリを思い描くのではなく、古の中国人や日本人の見方で星空を見上げてみるのも良いかもしれない。

 

参考

中国星座への招待

星空観察一覧

推しCMの話①エリシオン

やっぱり全く更新せずに放置してしまっていました() Isochkaです。若干酔った勢いに任せて自分史上最も好きなCMを紹介していきます。と言っても既にたびたび騒いでいるので、もうそれ聞いたよというフォロワーさんもいそうですが……

 

 

さて、私の史上最推しのCMがこちら。ホンダ・エリシオン プレステージの「グランドピアノ」篇。2007年……まあ確かに今や日本ではあまり見かけなくなりましたもんね…(Wikipedia先生曰く中国では現在も販売中だそうです)

https://youtu.be/p6csTFlfs1g

 

 

(以下は別タブで再生しながら読んでいただけると分かりやすいです。画像だけであれば【出演者もCM曲も完全網羅】2004年~2013年 ホンダ・エリシオン(Elysion) - 自動車CM大全さんも見やすいです)

 

曇天の険しい岩山、グランドピアノ、高原の一本道を疾走する黒のエリシオンが順に映ります。

ピアノの奏でる曲は力強く、厳かながら軽やかに駆け、まさに高級感を売りにした大きめの車種であるエリシオンに似つかわしい音楽(ちなみにこの曲を手がけたのは稲本響さんという方です)。和音が3回鳴るのに呼応してカットが変わる演出も憎いですね…こういうの軽率に好きになっちゃう…

 

走行する車、ピアノ、車の内装(これがまた高級感すごいんだ)とアングルが切り替わりつつ、ここで初めてナレーションが入ります。「その力は、特別な快適のために。」そして音楽は上っていき、頂点に達したところで––

グランドピアノが和音を一回大きく鳴らします。音楽がある程度分かる人は分かると思いますが、この音から音楽が半音上に転調しています。この音と同時に奏者は右ペダルを踏み、次の瞬間。

 

車のタコメーターが上がっていくのが映ります。この演出でもうダメでした。演出考えた人、天才……???

要するにピアノの右ペダルを車のアクセルペダルに見立てた演出というわけです。ペダルを踏み込んで、車のエンジンの回転数が上がっていく(ついでにその直後にマフラーが映るのも良いですね)。この比喩表現それ自体がもう十分エモいんですがそれだけじゃない。

このシーン、音楽的に見て/聴いても何ら違和感がないんです。音楽としては和音をフェルマータ的に伸ばしている場面ですから、音を持続させる効果のある右ペダル=ダンパーペダルを踏むのは至って自然なこと。

 

さらにここで転調することで音楽のテンションもさらなる高みに上っていくからすごいですね。

ピアノの右ペダルは音を伸ばすと言っても、ピアノの発音原理上どうしても音は減衰していきます。一方、車のアクセルは踏めばエンジンの回転数が上がるもので、勢いを増すと考えればある意味逆に近いはたらきをするもの。音楽の流れや映像の作り方によって両者をしっかりと対応させ、かつ音楽的にも自然な比喩として完成させて魅せるこのCM、なんと強いことか……

 

 

以上萌え語りでした。楽器と車の両方が好きな私にとってこれ以上ないほどに印象的なCMで、10年以上経った今でも定期的に見返しています。昔のCMをYouTubeに上げてくださる神様、本当にありがとうございます…。

このブログはこうして「中身の人格は基本的にTwitterと同じだけどより長文で好きなものをゴリゴリ(勝手に)語る場」のような感じで不定期更新しようかなと思っていますのでよろしくお願いします!…多分稀にしか書きませんが()

 

はてブ始めました

はてブ開設してみましたIsochkaです。放置しすぎて細石が巌になって苔むしてるライブドアブログを削除しようと思うので代わりに(?)作ってみました。

運用方針としては、定期的についったで発信してる好きなものの話をある程度まとめて書く場とかにしようかな〜とぼんやり考え中です。自分用メモを兼ねた感じになるかも?なお多分更新頻度は低いです。結局また放置するかもしれない(学習能力が無)。

 

ちなみにIDはアオアシカツオドリの学名です。One of 推し鳥です。かわいい。数多いる推し鳥たちのことをまとめて書くのとかもアリだな……